【取材】「人間活動家」宮﨑 紗矢香 氏

いつでも誰でも入れる学校の外にある“がっこう”をつくりたい、そこに込められた想いとは。

SDGs SQUAREでは、サステナブルやSDGsを意識した活動をされている方にインタビューをしています。どんな想いをもってその活動をしているのかを伺い、一人でも多くの方に伝えていければと思っております。

第17回目は、「人間活動家」宮崎 紗矢香 氏です。

Profile 

1997年生まれ。大学時代、環境活動家グレタ・トゥーンベリさんのスピーチに心打たれ、Fridays For Future Tokyoのオーガナイザーとして活動。新卒で入社した会社では、社会課題を考える多数のイベントを企画。「おはよう日本」「NHK World The Sings」ほか取り上げられる。
退職後、デンマーク全寮制学校フォルケホイスコーレをモデルにした北海道の「人生の学校」へ行き、キャリアブレイク。現在は、国立環境研究所対話オフィスにてコミュニケーターを務める傍ら、個人で気候変動に関する情報発信や、企業や教育機関への講演を行う。2022年7月より群馬県みなかみ町在住。

気候変動を軸に活動を通して今後挑戦したいことについて、お話を伺いました。



気候変動アクティビストたちのメンタルケア

―――現在の具体的な活動を教えて下さい
「気候変動やSDGsをテーマにした様々なイベントを開催しています。そのほかにも、2021年11月から月一回「気候文学対話」という読書会を開催しています。そこでは普段の自分の肩書を一度置いて様々な立場の人と対話する場づくりをしています。本がツールとなることで気候変動について知らなかった方と話す機会や積極的に活動しているアクティビストたちのメンタルのケアにも繋がるのではないかと考えています。

 また、移住先の群馬県みなかみ町で「みなかみディープタイムトラベル2022」というプログラムを開催しました。

ディープタイムというのは、長期思考のことを意味しているのですが、「いまここ」への囚われから解放され、悠久の時間の中に身を置くことで、自分も生命体の一部であることを感じ、過去からの贈与に気がついていきます。

自然体験が少なく、頭でっかちになりやすい都会の若者が、利根川の現流域であるみなかみで、そうした自己の内省を図る体験を行うことは、これからの時代に必要な学びと自己再生の場だと思い、企画しています。」





グレタの言葉に心打たれた

―――気候変動に興味を持ったきっかけは何ですか?
「2019年に株式会社One planet café主催の『SDGs視察ツアー』に参加し、そこでスウェーデンのSDGsに関する様々な取り組みを見てきたことが環境問題に興味を持つきっかけになりました。

実は、スウェーデンに行くまでは、『SDGs』という言葉を「知っている」程度でした。 帰国後の就職活動で、スウェーデンで学んだSDGsについて伝えたのですが『あなたの思うようにはいかないのでは』と返されたことがあり、『誰一人取り残さない』SDGsの理念からすると、就活生の言葉を取り残していないかと思いました。

(2019年9月のグローバル気候マーチの様子)

そんな中、スウェーデンの環境活動家であるグレタさんを知り、彼女が訴えているこの言葉に共感しました。

『あなたたちは誰よりも自分の言葉が大切だと言いながら、子どもたちの目の前で彼らの未来を奪おうとしている』(cop24でのスピーチより)

以前、スウェーデンに行った時に、偶然にも彼女が座り込みをしていた場所と同じ場所に行っていたことを帰国後に知ることになり、さらに彼女の言葉が身近なものになりました。

それ以降、Fridays For Futureで気候危機を訴える活動をしたり、当時通っていた立教大学で同世代向けに環境問題の深刻さを伝えたりするようになりました。」

(2019年2月のSDGs視察ツアーの際に通り過ぎた、ストックホルムの国会議事堂)




「今、自分がやりたいことは何か」を考える機会が必要

―――今までの活動を通して感じていることはありますか?
「若い世代の方々と関わる中で、Z世代は二極化してきていると感じています。

やりたいことがあっても叶わない『欲求不満』の若者と、やりたいことがわからない『欲求不明』の若者が存在していて、特に『欲求不明』の若者が多いなと思います。

このような状況を考えると、気候変動に対して何か行動をする前に、『今自分がやりたいことは何か』を考えるワンクッションが必要なんじゃないかと。そのための場やプログラムなどをもっと作っていきたいと考えています。」



学校の外にある“がっこう”をつくる

―――今後挑戦したいことを教えて下さい
「大学卒業してから『本当に自分がやりたいことは何なのか』と考える期間がないまま社会人になる若者が多いなと感じています。

これまでのこの年齢になったから、このライフステージ』という一つの選択肢ではなく、『人生に新しいステージ』を設けることが必要だと感じます。

そこで私が挑戦したいことは、ここみなかみの地で、世の中の当たり前に支配されることなく、ありのままに自己や他者を掘り下げ、地球環境との調和を結ぶような生き方を学ぶ場所を作りたいと思っています。

ビジョンは、『いつでも誰でも入れる学び舎が各地に点在し、学ぶことが働くことにとってかわる社会。結果的に市民参画が活発になり、社会への手触り感が感じられ、現実に根差しつつ理想を諦めない人が増える』このように描いています。

理想のモデルは、イギリスにあるエコロジカルな生き方を学ぶ大学院大学「シューマッハカレッジ」のような場所です。移住前にカレッジを訪れたことが大きな転機になりました。』



集団で社会に対して働きかけるアクション

―――私たちが気候変動に対して、今日からできることを教えてください。
「現在勤めている国立環境研究所が開発した『じぶんごとプラネット』というサービスがおすすめです!

いくつかの質問に答えることで、自分のカーボンフットプリントが算出されて、暮らしを見直すことが出来るような、具体的なアクションプランが出てきます。自分でどんなアクションができるのかを知ることができます。

一人で考えていると『個人で明日からできる日常的なアクション』になりやすいですが、『集団で社会に対して働きかけるアクション』が大事です。

そのためには、集団で能動的なアクションについて話し合う場を設定することや、問題解決に向けたイベントに参加することが、実は一番効率的なアクションだと思います。

いろんな人を巻き込みながら、一緒に何か社会を変えるアクションをしてほしいなと思います。」



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若者に向けてイベントや情報発信を通じて、気候変動について知る場作りをしている宮崎氏にお話をお伺いしました。
この活動が広がることで、より多くの方々が気候変動を知り、解決に向かう活動が活発になることを願います。


〈Information〉

気候文学対話~心を守るための読書会~ 
https://climatedialog.weebly.com/?fbclid=PAAaZNEqy_a2MJUlh_F7tGgQEf_olo9ZkTqBmrzDO24CAkgSRIfxa8AwWkb9k

みなかみディープタイムトラベル2022
https://minakamiyouth.weebly.com/

気候アクションガイド 
https://www.tbwahakuhodo.co.jp/uploads/2021/11/TBWA-HAKUHODO_climate-change-action-guide.pdf