【取材】「株式会社日水コン」 インフラマネジメント本部国内インキュベーション事業部事業戦略部 主任 瀬川 奈未氏

『水コンサルタント』による地域とのサステナビリティの取組み、そこに込められた想いとは。

SDGs SQUAREでは、サステナビリティやSDGsを意識した活動をされている方にインタビューをしています。どんな想いをもってその活動をしているのかを伺い、一人でも多くの方に伝えていければと思っております。

第18 回目は、「株式会社 日水コン」事業戦略部 主任 瀬川 奈未氏です。

Profile 

株式会社日水コンは、上下水道事業を中心に、計画・設計等の技術コンサルティング・サービスを提供している建設コンサルタント会社。
水道事業・下水道事業に基盤を置き、河川・砂防事業、廃棄物関連事業へと事業分野を拡大する中で、創業来一貫して「水」をベースに生きてきた「水コンサルタント」のパイオニアです。

同社事業戦略部 主任 瀬川 奈未氏 に日水コンの活動にはどのような想いが込められているのか、お話を伺いました。

仕組み作りの知見を活かし、『水』を軸に地域と連携

―――御社の活動の経緯と、具体的な内容を教えてください。
「当社は、水のコンサルタントとして、従来の水インフラの計画・設計技術を基盤としながら、新たな水インフラの価値を生み出し、地域振興に繋がるイノベーションを起こしていくことに挑戦しています。

その中の一つの取組みとして、秋田県のにかほ市様と一緒に推進している『にかほ市の“水”を切り口とした地域振興プロジェクト』があります。このプロジェクトは、にかほ市の“水”との共生による新たな付加価値の創造を目指した取組みで、当社がお手伝いをさせていただいて5年目を迎えます。

まず初年度には、地域内外の学生による「若者がミズから描く未来討論会」を開催し、「水循環を生かす!躍動するにかほ市を創造する」という基本理念が掲げられた『未来型水循環都市にかほモデル(以下、「にかほモデル」という)』が提案されました。2年目以降は、このにかほモデルの実装に向け、市職員の皆さまと共に勉強会を重ね、「にかほ市水循環基本計画」を策定しました。

この計画は2022年8月に内閣官房水循環政策本部より水循環基本計画に基づく「流域水循環計画」に該当する計画として公表されました。プロジェクトを持続的な取組みとするためには、市の政策として位置付けることは重要であると考えています。



私たちはこのプロジェクトを通して、人と人との繋がりから “水”を切り口とした地域振興の素地を築いてきました。そのプロセスにおいて、重要なキーワードは「学び」でした。

プロジェクトのビジョンを市の計画として位置付けるだけでなく、実際のアクションとして水環境×学びをテーマとした取組みに挑戦しています。

昨年度は、にかほ市内の遊休施設を活用して地元企業と連携したプログラムを企画してにかほモデルの構築を目指した勉強会を行いました。

今年度は、にかほ市水循環基本計画を住民の皆さまへ周知する目的で、住民参加型の「ミズからにかほ2022~めぐる水から探してみよう、わたしたちにできること」をにかほ市内の道の駅で開催しました。

このような活動のなかで、地域にある豊富な水資源は地域の中にいると当たり前の存在になっていることに気付きました。私たち“よそ者”が地域の方々と関わることで、地域の外の視点から、地域の魅力を再発見できるのではないかと考えています。

2021年10月開催
「にかほモデルの構築を目指した勉強会」
(2022年10月のイベントでは司会を担当)

にかほ市様の取組みの1つとして現在準備中の、「にかほのほかに」という施設があります。ここは、昨年度のにかほモデルの構築を目指した勉強会の開催場所です。
廃校になった小学校をリノベーションし、鳥海山の伏流水を体感できるアウトドアサウナや、カフェ、宿泊ルームなどを設置して県内外の人々にご利用いただくことで、にかほの水資源を含む地域の魅力を発信する拠点を目指されています。完成しましたら、いろいろな方に、にかほ市へ遊びに来てほしいですね!」

(リノベーションした学校の様子 ※2021年10月現在)

水コンサルタントとしての役割

―――どんな役割を担っていますか?
「コンサルタントの役割は、複合的な現状の問題点を紐解き、課題解決策を提案することだと考えています。本プロジェクトでは、豊富な水資源を地域産業に生かすという課題に対して、コーディネーターとして検討に必要なリソース(情報や人材、資金など)を集めたり、ファシリテーターとして次のステップに導いたり、プロデューサーとして価値を生み出したりするなど、柔軟に立ち回ることが期待されていると感じています。」





水のポテンシャルを伝えていく

―――この活動を通して伝えたい想いは何ですか?

「これまでは自治体・事業体様と共に、公共資産である水インフラや水環境を守り、持続可能な地域の生活基盤の構築と健全な水循環の維持に努めてきました。これからは水インフラや水環境を“守る”だけでなく、水資源を地域産業に“生かしていきたい“と思っています。

生活の中で、当たり前のように身近にある『水』に意識を向けて『水のポテンシャル』の偉大さを伝えていきたいです。」



事業者として地域振興に貢献する

―――今後、どんなことに挑戦してみたいですか?
「時代の潮流であるカーボンニュートラルなども視野に入れたうえで、地域の『水のポテンシャル』を活かした仕事をしていきたいと思っています。

例えば、水×エネルギーの視点から、地域の河川、あるいは農業用水路や水道施設で小水力発電事業を行うことで、地域の脱炭素化、エネルギー自給率向上、経済効果などに貢献できるような取組みができればと考えています。」



水質調査から始めてみよう

―――私たちが環境問題に対して、今日からできることを教えてください。
「水辺調査が出来る『水辺へGo!』というアプリがあります。川などの水辺に行った時に、その場で写真を撮ってアップロードし、簡単な質問に答えることで、水辺を調査できます。

ぜひ、水辺へ訪れた際はこちらのアプリを使用していただき、水環境問題に対する行動のきっかけにしてみてはいかがでしょうか。

※当社が開発し、一般財団法人日水コン水インフラ財団が管理運営を管理・運営しているアプリ。集まった水辺データ(調査結果・写真・コメント)はアーカイブされ、水辺整備(環境計画や防災・減災計画)の参考として有益な資料となります。」


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『水』をテーマに、地域と様々な取り組みをされている 日水コン 瀬川氏にお話をお伺いしました。

私たちが生きていくなかで大切な資源となる『水』を守っていくだけでなく、より生かしていく取組みがさらに広がっていくことを願います。


〈Information〉株式会社日水コン

HP       https://www.nissuicon.co.jp/

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にかほのほかに https://nikahonohokani.com/