Interview「天音堂 リフォームラボ株式会社」上利智子氏

自然と共生する持続可能な循環型の家づくり、そのこだわりの中にある想いとは。

SDGs SQUAREでは、SDGsやサステナブルを意識した活動をされている方にインタビューをしています。どんな想いをもってその活動をしているのかを伺い、一人でも多くの方に伝えていければと思っております。

第2回目は、天音堂 リフォームラボ株式会社代表の上利 智子さんです。
小鳥たちが毎日のように遊びに来る、緑豊かなお庭と、天然乾燥で丁寧に仕上げた無垢材を使用して建てた、ご自宅兼オフィスにお邪魔してお話を伺いました。

Profile
天音堂 リフォームラボ株式会社
「人や自然とのつながり 次の世代に繋がる循環」このことを根っこにお客さまにとっての大切な住まいづくり・再生に努めておられます。日本の風土に合った国産材・天然素材など、可能なかぎりの選択肢を提案し、メーカーや施工者の都合ではなく、お客さまの立場にたって適切な情報と施工技術を開示・提供されています。

代表
上利 智子氏(あがり ともこ)

経営戦略コンサル会社を経て、老舗工務店の若き職人達との出会いから、2004年リフォームラボ株式会社を設立。両親の実家のリフォームで、心から納得のゆく家づくりの難しさを実体験。お客さまの立場からの住まいづくりに真摯に向き合う事の大切さを学ぶ。30代での米国生活や、ツアーガイド・IT企業の経営の経験から得た文化や価値観が財産。設計者や大工であった祖父や曾祖父の影響と、生まれながらに樹木や動物たちとともにあった暮らしが、住まいづくりの根っこに。

――どのような想いでお仕事をされていますか?

お客さまに寄り添う事、職人の手仕事を大事にして、気持ちが良い住空間をつくることを大事にしています。
お客さまに寄り添うという事がものすごく重要で、お客さまが何を求めているのかという事に徹底的に寄り添う。それを、現場の職人や設計士に伝える、お客さまの声にならない声を拾い、お客さまと職人さん達をつないでいく。
ただ伝えるのではなく、言葉以上、想像以上の事を職人や設計士と一緒になって形にすることが私の仕事。
単純に味方になるだけでなく、設計のプロとしてそのお客さまにとってベストなものを引き出す、つくり出す、提供できることが大事だと思っています。

――お客さまの立場に立って考えて、そのような関わり方をして下さると、商品やサービスの金額の前に、気持ちが幸せになりますね。では、どのようなきっかけで家づくりを始めましたか?

お味噌の発酵食品が家の環境と繋がった事
2011年に埼玉県小川町で有機野菜を作っている人達の力を借りて、そこの“青山在来”という土地の大豆を使って、お味噌をつくるイベントを主催していました。
味噌は腸内環境を整える発酵食品だから、食養生の基本として味噌を摂らないといけないという想いから始まりました。
そして自分で味噌を作るようになって、初めて色々な事を知るようになりました。
例えば、味噌はかつて、現代のように簡単に温度管理ができない環境で、蔵の中に杉樽を使って味噌を作っていた。常在菌という微生物は杉樽に住み着く。杉樽に住み着く菌が美味しい酒や醤油を造り、土地に適した微生物が発酵を助けてくれるという事を知ったのです。
そこで「杉じゃなきゃいけないんだ!」と気が付き、さらに「なぜ杉が大事か?」と、色々な角度から考えた時に、“杉は発酵食品のゆりかごなんだ”と気が付いたんです。
それ以来、良い味噌を造ってくれる発酵食品のゆりかごのような環境で人間が生きれば、そりゃ人間だって、元気になれるのではないかと、私は思っています。
杉は、触ってみるとさらっとして柔らかく温かみがあり、他の木とは全く感触が異なります。
さらに「杉は他の樹種に比べると柔らかいので傷が付きやすいけれど、人を傷つけない」という特徴を持っています。
さらさらしていて気持ちがいいから夏は素足が気持ちよく、冬も暖かいんです。
触れた瞬間に自分の体温が木に伝わるから暖かく感じる。だから床暖房がなくても、人間が体温さえ持っていればあったかいわけ。私は夜中にお手洗いに行く時でも、裸足で歩いても全然冷たくないんです。
柔らかみがあって、気持ちが良くて、且つ、木が呼吸していて、いい状態でいれば腐敗には繋がらなくて、いい発酵に繋がるという、樽の役割みたいなことを考えると、「杉っていいじゃん!」という事がわかりました。

(左側:自然乾燥の無垢材 右側:無垢材の表面に張り付けた木材)

家の環境に見立てる「パンのカビ実験」で、杉の良さを確信
自分の住んでいる環境に見立ててほしいのですが、プラスチックの容器にいろんなケースを作ります。(下記の写真をご参照ください。)ケース①は、市販のパンのみを入れると、腐敗してドロドロになりました。
ケース②、天然乾燥の杉のおがくずと天然酵母のパンを入れると、香しい香りになって腐敗せず発酵の方向に進んで、良い微生物でここは保たれている状態です。何年たっても腐敗はせず、おがくずと一体化しています。(笑
ケース③、天然酵母のパンのみを入れると、カビが生えることもありましたが、パンに形はそのまま残っています。
普通の人はケース①のように、化学製品である新建材やビニールクロスは使われており、床もケミカルの塗料が塗られています。お掃除しやすいと言われますが、実はすべてケミカルでできた中で囲まれ、呼吸ができない中で息苦しい環境なのです。
いわゆるシックハウスやアレルギー等は、こういうケミカルな環境が要因となるのです。
密閉され換気不足の住空間は、ケミカルな成分とともに、自然と空気は汚れていくことで、体の不調に繋がります。ですから、こういう風に密閉された空間にいるケース①のパンは腐敗してしまう。これが今の一般的な家の環境だと言えます。
それがケース②のように良い杉が入ることで、杉の力と天然酵母のパンが持っている微生物の力によって腐敗せず発酵する。ケース③の天然酵母のパンのみでも、パン自身が持っている酵母の力があるから、カビが生えても腐敗せず発酵しています。
この大きな違いがあり、家の環境にたとえてみると面白いなと思って実験してみたんです。すごいでしょ、この違い!

(2016年に行った実験 当時のまま保管されていました。)

「土に還らない家づくりは嫌だな」という想い
私の家づくりの基本は、土に還る素材でつりたいという想いです。土は命のゆりかごだから、土に還らないと、次の命は生まれません。
土に還らないということは、分解しないという事。プラスチックも分解はするようですが、とても時間がかかります。だから、海洋プラスチックは怖い。という事でしょ。分解して土に還れば、それは次の命に繋がるけれども、分解しないということは次に命に繋がらないという事。サステナブルではないのです。
理想は土に還る素材で全部家を造りたい。でも様々な規制や約束事もあるので、その中でできることをひとつひとつ、地道にやっているというのが現実です。
その中でも、一から木材の素材を選び、内装の素材を選び、それが自分で間違いないと思ったものを選んできました。

――これからを生きる世代に向けて、一言お願いします。
何が本当に自分にとって良いものか、気持ちが良い・心地良いとかという事を見つけて欲しい。
自己犠牲の上で成り立たなくてはいけないという考え方は捨てたほうがいいし、まず自分を幸せにして欲しいな。そういう選択肢はもっと世の中にはあるし、「自分の中に自分をマネジメントする経営者マインドを持つ」ということは、若い人たちにとっては大事なことになるのかな。
自分は何がやりたいとか、何ができるかとか、そういう自分をどうやって経営するかという、その発想をすることでやりたいことが見つかるだろう。誰かに利用される生き方はやめようよ、もっと自由に生きて欲しいなと思います。

(お庭に元気よく咲いていた梅の花)

納得のいく素材を選び、何よりもお客さまに寄り添う事を大切に、家づくりをするリフォームラボ。生きる上での基盤の一つとなる、「家」の大切さに気付かせてもらいました。

世の中には沢山のものがあり、簡単に手に入る時代。
だからこそ「私たちが生きる上で、本当に必要なものは何か。」と、一歩立ち止まって考える必要があるのかもしれない。
多くの時間を過ごす住空間である「家」を見直すことで、まずは自分の体にとって良いものは何か、自分にとって心地よいものは何か。さらには、地球環境にとっても良いことは何かを考えるきっかけになるのではないだろうか。

〈Information〉
天音堂 リフォームラボ株式会社 公式HP
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