【取材】 「元青年海外協力隊 数学教育隊員」佐原光氏

アフリカ ガーナでの青年海外協力隊の経験を経て、これから挑戦したい事とは。



SDGs SQUAREでは、SDGsやサステナブルを意識した活動をされている方にインタビューをしています。どんな想いをもってその活動をしているのかを伺い、一人でも多くの方に伝えていければと思っております。

第6回目は、「元青年海外協力隊 数学教育隊員」佐原光氏です。

Profile
2017年3月から2019年3月までの2年間、アフリカのガーナにて数学教育隊員として派遣されていました。帰国後、2021年3月までは石川県金沢市でフリースクールの職員として勤務、現在は退職し地元の千葉県浦安市へ戻り、フリースクール立ち上げのアドバイザーをされています。今後は新設される学校の企画準備に携わられます。

様々な経験をされている佐原氏に、青年海外協力隊での経験と、これからどのような事に挑戦していきたいか、お話しを伺いました。


―――ガーナではどのような活動をされていましたか?

「アクティビティを利用した授業や、遊びながら学ぶゲーミフィケーションなどの要素がガーナの数学の授業に足りていなかったので、大学院を卒業してから科学館で学芸員として実験ショーなどをしていた経験を活かし、ガーナ全土の学校を回りながらカードゲームやパソコンなどを使った授業や実験ショー、オリジナルのテキストなども作成しました。体験しながら学べるような物がまだまだ少なく、そのようなことを広める活動をしていました。」


―――青年海外協力隊に参加しようと思ったきっかけは何ですか?

「大学生の時に、NGOやNPOが主催する途上国支援のボランティア活動やスタディツアーに参加し、実際に現地に行き、現場に入ることで世界の問題に対してすごく実感が湧いて、自分事として捉えることができました。その頃から20代のうちに、協力隊に行きたいと思っていました。大学生の時の途上国での経験から、悲しむ人が少しでも少ない世界を作りたいという人生のミッションを持つようになりました。

そこで、僕に何ができるかと考えました。最初は、数学が得意でずっと数学の研究をしたいなと思い、大学では理工学部数学科で学び、さらに大学院まで卒業しました。

ですが、数学で何かを開発をして助けられる人は、直接的にそれを必要としている人だけになってしまいます。もし子どもたちの他者を思う心を育てることができると、自分の身近なところだけでなく、外の世界に対して目を向け他者に対しての思いやりや世界と生きていくことに対して意識が向く子ども達が育つことで、私のミッションの達成に近づき、悲しむ人が一人でも少ない世の中を作れると考え、僕は教育の道を選びました

青年海外協力隊には、特別な資格がなくても応募できる枠もあるため、誰でも参加することができます。それを僕自身が体験して本物を語ることができるようになりたいという思いもあり、協力隊に参加しました。大学院を卒業してすぐに協力隊に参加するという道もあるのですが、ある程度仕事を経験して技術や知識を学んだ上で、より役に立てるようになろうと思いました。そして、20代最後の年、29歳でガーナへ行きました。」


―――ガーナはどのような国ですか?

「ガーナに行く前に持っていたイメージとは裏腹に就学率は高く、ほとんどの人が読み書きができます。むしろ年配の方が、読み書き出来ない人はいました。アフリカの中でもガーナはまだ発展している地域で、インフラも整い始めていて生活がしやすくなってきています。ですが、よく水道は止まっていました(笑)。街に出ると物乞いの子ども達ももちろんいましたが、想像していたほどではなかったです。

僕がいた地域はガーナの中で一番北の西側で、乾季は結構乾燥しています。ハマターンという時期があり、その時期はサハラ砂漠の砂が沢山飛んできて砂っぽく、すごく乾燥しています。雨季だとスコールなどの大雨が降ります。歴史的な建物としては、ヨーロッパ諸国からの植民地時代の奴隷貿易の歴史を感じられる場所もあります。

奴隷貿易の拠点として栄えていた要塞
奴隷が集められていたピクロ・スレーブ・キャンプ



他にも、世界中のゴミが集まる世界で1番大きなクラスのゴミの最終終着点がガーナにあり、日本の製品もここに集まってきています。ゴミの中には、プラスチックやパソコンなどの機器類なども集まります。ここの街の人達はそのゴミを燃やして、その中にある金属類を取り出して、販売し生計を立てているようです。」

ゴミが沢山浮いている場所もある
世界中のごみが集まる場所


―――ガーナにはどのような課題があると思いますか?

「SDGsでいうと目標4番質の高い教育をみんなにが、まさに教育系の隊員として派遣されていたので一番関わり、一番感じるところでした。日本の教育と違ってどのような問題があるかと言うと、例えば、画一一斉の一方的な授業が大半であることや、先生という地位が低く給料が安く、先生になりたくてなっている先生が少ないことです。その為、先生の意欲が低く、まだまだ体罰があるという面があります。

物資的な面では、教科書や教材が足りないことです。教科書の中身もあまり質が良くなく、構成されてる問題の順番が適切ではないなど、まだまだ改善する必要があるなと感じました。

このような問題があることで効率的に学べず、理解度が低くなり、学習に対する面白さを感じなくなってしまうと思います。」

―――私たちが出来ることは何があると思いますか?

「まず簡単にできる事は、発展途上国や環境問題など、自分にとって身近な世界の外について、自分からインターネットで調べたりとか意識を向けることです。

そこからさらに発展して直接的な支援で言うと、例えばフェアトレードの商品を購入したり、国際協力系のイベントなどに参加することです。イベントの情報なども自分でキャッチして、参加して意識を向けることができるんじゃないかと思ってます。

身近な世界だけでなく、その外の世界に対して意識を向けて、そこで悲しんでいる人達に対して、自分が出来る事はないかと考えて欲しいと思っています。僕の祖母は、昔から相手の立場になって考えなさいということをよく言ってくれました。その言葉が僕の中に残っています。その言葉があったからこそ、外の世界に目を向けるようになったと思います 。」

―――これから挑戦したいことは何ですか?

「地元のフリースクールの立ち上げをサポートしたり、オルタナティブスクールと言われるような公立の学校では学べないことを学べるような学校、新しい学校の形を実現するためにこれからも動いていきたいと思います。いろんな学び方の選択肢があるような世の中になって欲しいです。」


―――

日本から13,829 Km離れたガーナで2年間、数学教育隊員として活動された「悲しむ人が少しでも少ない世界を作りたい」という人生のミッションをお持ちの佐原氏より、これから挑戦したいことについてお話しを伺いました。日本から遠く離れた国で起きていることを知ることで、サステナビリティを考えるきっかけになればと思います。


〈Information〉
JICA – 国際協力機構
公式HP https://www.jica.go.jp/
JICA海外協力隊の世界日記 https://world-diary.jica.go.jp/saharahikaru/
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