【取材】「吹きガラス工房 glass imeca」神永 朱美氏

琵琶湖の水草で着色した吹きガラス「琵琶湖彩」、そこに込められた想いとは。

SDGs SQUAREでは、サステナブルやSDGsを意識した活動をされている方にインタビューをしています。どんな想いをもってその活動をしているのかを伺い、一人でも多くの方に伝えていければと思っております。

第9回目は、「glass imeca」 神永 朱美氏です。

Profile 
茨城県出身、大学時代を北海道の釧路で過ごし、小樽の北一硝子に5年間務める。その後、作り手を志し、ガラス工房スタッフや師匠への師事を経て独立。現在は滋賀県にガラス工房を構え、数々の展示会に出展している。

琵琶湖で大量発生している水草に着目し、水草を使って発色させた色ガラスを、宙吹きで作られています。どのような想いをもって活動をされているのか伺いました。



小樽の北一硝子での経験がガラス作りのきっかけに

―――ガラスとの出会いを教えてください。
「私は茨城県出身で地元の高校に通い、大学進学のため北海道の釧路で4年間を過ごしました。その時の北海道での生活があまりにも心地よく、もう少し北海道ですごしていたいと思い、札幌方面で就職活動をする中で『小樽の北一硝子』と出会いました。就職説明会での『暮らしの提案をするお店です。単なるお土産屋さんではありません』というお話に心を打たれ、思い働き始めました。
すごく人に恵まれた環境で働くことができ、ここで過ごしているうちに私もどんどんガラスが好きになりました。仕事の中で、複数の工場を担当し、商品開発から企画管理、展示、広告、接客と、様々な業務を経験し、深く勉強させて頂きました。

この5年間が足がかりとなり、ガラスの作り手を、志します。
まずは、小樽市内のガラス工房に転職。それから様々な方と繋がる中で、京都の現お師匠と出会い、師事。ガラス工房を回していくということはどういうことか、全身全霊で、学ぶことになります。」


琵琶湖で大量繁殖している水草に着目

―――琵琶湖彩(びわこいろ)を作られたきっかけは何ですか?
「独立して滋賀県に工房を構えてから本当に地域の方々にお世話になりました。温かく接していただいて、何かひとつ、地域の方が喜んでくれるものを作りたく、ふと色ガラスを作ろうと思い立ちました。

ガラスの色はガラスに含まれる鉱物によって変わります。活動拠点の滋賀県で取れる鉱物を調べたのですが、鉱物は自分では見分けがつかない上、採取した鉱物を砕いて粉にする工程はとても継続して出来ない。簡単に手に入り、むしろ余っているものはないか考えた時、琵琶湖での水草大量繁殖のことを思い出しました。すぐに水草を処理乾燥している企業を探し、乾燥水草を分けていただいた所から、琵琶湖彩作りは始まりました。」

「琵琶湖彩」の標準色、淡いグリーン。




地元の方々の温かさに触れる

「大津市の地元百貨店に初出展した時、見て下さったお客様に近所で活動している旨を伝えると、とても喜んでお話をしてくれたことがあり、こんなに温かいものなのか!と感動を覚えました。この温かさが最高に嬉しかったですね。

特に、この琵琶湖彩を始めてからお客様の反応が全然違います。琵琶湖の水草を使っているとお話すると、目を輝かせて下さる。マザーレイクと呼ばれ慕われるように、琵琶湖そのものが、地域に愛されていると、肌で感じました。」


琵琶湖彩の青色はワクワクから始まった

「水草から淡い緑色を出す研究をしていると、緑色以外の色が出てきた時がありました。なぜ、違う色が出るのか調べると、それは酸化還元反応、つまり熔解時の酸素の供給量によって変わる事が分かりました。

素材は同じ琵琶湖の水草なのに、酸素の量によって違う化学反応が起こり、色が変わるなんてワクワクしませんか?
これを知ってから、色を変えた商品を絶対に作ろうと思い、淡い緑の作品を発表した後、すぐに青色の調合の研究に取り掛かりました。

琵琶湖彩 還元色blue

琵琶湖彩(びわこいろ)という名前を決める際、やはり琵琶湖の水草を使用しているので『琵琶湖』は外せないと思いました。次の字は何にしようと考えていると、地元の方々から『琵琶湖は何色だと思う?』と聞かれ、『琵琶湖は毎日色が変わるんだよ、時間帯によっても変わるんだよ』と教えていただいて。お聞きするとこれは共通認識のようで、様々な方からこのお話を聞き、それで『彩』という文字を選びました。ここに住む方々がいつも見ている、様々に変化する琵琶湖の色彩。そこに対する愛情のような想いを、このガラスの名前に入れられたかなと思います。」


琵琶湖の水が綺麗になりすぎ水草が増えた

―――実際に水草は琵琶湖にどのような影響を及ばしていますか?
実は、琵琶湖の水が綺麗になったため、水草が増えました。水草を分けていただいた方に聞いたお話ですが、過去に日本中が大干ばつに見舞われ、凶作になりお米が採れず、タイ米を緊急輸入した年がありましたよね。干ばつにより、河川から琵琶湖への流入量が激減し、琵琶湖の水位が下がってしまった。すると、琵琶湖の透明度が抜群に上がったそうです。

そうなることで、太陽の光が湖底まで届き、眠っていた草の種が一気に発芽し、水草の大量発生に繋がりました。それから水位が戻っても、1回成長した水草は勢いが止まらず、今でも大繁殖が起こっている状態です。大雨になると、水草が湖岸にたどり着き、水草は1日で腐ってしまうので匂いが発生してしまいます。船のスクリューにも絡まってしまい、漁業を妨害します。また、水草が増えすぎると湖内に酸素が十分に行きわたらず、琵琶湖の生態系的にも影響が及んでしまっている状況です。

これを解決するため、滋賀県は予算を出し、委託された漁師さんが水草の水揚げ作業をし、その日中に業者の方が回収や処分などをしておられます。漁港には、水草を水揚げするクレーンが設置されています。」



―――この活動を通してどのようなことを実現したいですか?

「周囲の方々は、琵琶湖の水草を利用することで環境問題に取り組んでいると思って下さっていますが、私はというと、琵琶湖の水草という素材・原材料が持つ可能性を試し、ただ綺麗なガラスを作りたいという思いだけで、取り組んでいます。

その先は・・・そこから見てくださる人がそれぞれに、琵琶湖への想いや、環境への想いを、ふと、感じてくれたら、その先の行動に繋がるのかもしれませんね。そのきっかけになってくれたら、それで十分です。」

還元が強くなると、エメラルドグリーンも出せる

―――これからどんな事に挑戦していきたいですか?
「琵琶湖の水草の鉄分は酸化還元反応の度合いによって、まだ様々な色が出せます。
今は偶然に出ている色を安定的に出せるよう、これからトライしたいです。」

―――私達が環境問題に対して、今日からできる事を教えてください。
「ものを作って、その価値をお客様に認めてもらい、対価を頂く、その繰返しで生きて行くという営みを通して、何かを買うという行為は作り手への投資である思います。当たり前のことであるからこそ、表面的なことだけを見てはいけない、物事の真髄を掴めるように考えると、良い面と悪い面を総合的に判断し、選択する事の助けになり、すべき事が自然と見えてくるのではないかと思います。 

サステナブルな取り組みをする上で、本当にサステナブルなのかと、慎重に考えて選択することが大切だと思います。」

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琵琶湖で大量発生している水草に着目し、綺麗なガラス作りをされている神永氏にお話を伺いました。この透き通る美しさをもった琵琶湖彩が、より多くの人の目に触れて欲しいと思います。さらに、琵琶湖彩を通して、琵琶湖の水草の問題について知る人が増えることを願います。



〈Information〉
吹きガラス工房「glass imeca」
住所     〒520-0834 滋賀県大津市北大路3丁目2-12 glass imeca
お問い合わせ  TEL 090-9439-0581
公式HP    https://www.glass-imeca.net/
琵琶湖彩HP https://www.biwacoiro.net/
オンラインショップ https://www.biwacoiro.net/online-shop
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